東京で久し振りに家具店や家具売り場に行った。参考のために、日本の家具カタログをラオスに持って行こうと思っての事である。
どうせ行くなら、日本最大の売り場面積を持つ大塚家具有明店を考えた。しかし、往復に要する時間もあり、広すぎて疲れそうな予感もするので、その日、都合のよかった新宿店に入った。
店内に入るとカウンターに誘導されて何かを記入するシステムになっているようだが、いささか煩わしい。私は、誘導員に単に見るだけで来たのですと申し述べると、取りあえず案内パンフを渡され、店内閲覧(?)を許可された。
客の多さに先ず驚いた。広い商談コーナーの各テーブルでは、若い二人連れから熟年夫婦まで、多くのカスタマーが、見積り、デザインの相談、果てや設計図面を広げて商品選択まで行なっている。従来の家具屋では見たこともない光景である。熱気、活発、繁盛、意欲が伝わる。これが大塚家具の底力かぁ。などと少し唸った。
バブル崩壊期でさえ日本の年間住宅着工件数は百万棟を下らない。テーブルセットなどは、多くの場合新調するだろうから、不景気な時期でさえ凄まじい数の家具が売れているのである。大塚は、そんな多くの需要と客を取り込むことができたのだ。しかも、国内最低価格保障制度をパンフレットには謳っている。安い家具店の価格に合わせるのである。
全9フロアーのうち、テーブルセットを主にしたリビング&ダイニングのフロアーが5フロアーを占める。主な売れ筋である。その中でも、カジュアルと分類されたリビング&ダイニングのフロアーにある商品の安さとデザインレベルには少々驚いた。
とにかく安い。そして、多くの椅子は、単に安いだけではなく、そこそこのまとまりを見せる。デザイナーを抱え、製造はアジアなのだ。
ひと昔前の東南アジア製家具は、ほとんどがラバーウッド製だった。安ければ良かったのだ。その後、甲板(天板)と脚は北米産のオークやチェリーに代わり、目立たない部材にアジア材を用いるようになった。所が、今回見たのは、外観部材のほとんどに北米材を用い、ラバーウッドは見えない部分に使用されているだけだった。そして、デザイン的にもモダンでシンプルである。これは売れると思った。
高い工房家具を買う理由はないではないか。
次に、無垢材を扱う工房家具テイストの製品を多くみかけた。暫く前からこの傾向はあるが、ここでも一定の商品割合として確保されている。需要があるのだ。そして、こちらもこなれたデザインである。
さらに驚いた事に、塗装仕上げされた無垢の広い一枚板もある。材料はトロピカルウッド。価格は8万前後。脚としての木製フレームも用意されている。無塗装でオーダーし、自分でオイル仕上げをすれば落ち着いたものができる。高価な工房製厚め一枚板テーブルを買う必要はないではないか。
家具製造はローテクだから、企業の参入は比較的容易である。単品が大量に売れる時代ではないし、投資を回収するため、アジアのメーカーでも少ロットで製造してくれる。ベトナム、旧サイゴンにある家具メーカーの担当者は、一品でも図面を渡せば作るといった。
元問屋のニトリも大型小売店を始めて久しい。大塚のオリジナル商品も益々増える可能性がある。さらには、小規模なデザイナーズブランドも増加していくに違いない。ビジネスチャンスはインターナショナルファニチャーフェアにブースを借りて掴むのである(すでにそういう方も存在する)。
高級品も扱いながら、品揃え豊富、廉価品も多く、しかし、家具の品質を低く感じさせない店内の雰囲気、それでいて敷居の高くない大塚は多くのカスタマーが入るのだと思う。
(工房家具屋は何処へ ― と頭をよぎるものがあった)
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余談だが、ジョン・ケリー(注1)のサイドボードなどが2、3点展示してあった。実は、マレーシアにいる頃、彼の家具はマレーシアの工場で作られているという事を知り、訪ねてみたくてかなり探したが、所在がわからなかった。高級品として売られている彼の家具のマレーシア製クオリティと、QCを確認したかったのである。
展示品のサイドボードもフレーム構造だった。そのため、材料が二重になる部分があり、自重も相当なものだった。クォリティはまあまあ(それほど高くはないという印象)、ただし、マレーシア製ということを考えれば良いほうかもしれない。値段もそれなり。彼の製品を見ることができたのは幸運だった。
注1:John N. Kelly:NY在住、建築家、家具デザイナー。フレームを主構造(注2)とした箱物のデザインが特徴であり、チェリーを用いたシンプルな家具デザインは、どこか日本的でもある。
注2:先ずフレームがあり、そこに各パーツを納めていくというような概念を持つ箱物。フレームに各ユニットを入れ込むと言えば理解しやすいか?。工業手法の機能美を伝統手法と融合させ、新たな機能美を得るという試みは理解できる。