ようやく椅子作りを行う環境が整ってきた。
椅子作りは長年やりたい仕事だった。深刻な理由はない。単に椅子が好きだったからだ。
大学の卒業制作も、職業訓練校の最後の自由制作も椅子を選んだ。
昨年、念願だった初の椅子展を開くことができた。
モチーフは、英国が発祥のウィンザーチェア。
ウィンザーチェアは工房設立当初から、いつの日か作りたいと思っていた。とりわけ、コンティニアスアームウィンザー (一本の無垢材を曲げて背もたれから肘掛まで一体) を作ることは夢だったが、どうやって作るのか、手がかりも見出せない遥かな目標だった。
工房設立から二、三年して、スラットバックチェアに出会った。
無駄なものがなく、シンプルで優雅。ウィンザーチェアは難しいが、この椅子ならバリアは低いような気がした。ただし、後脚は曲げ加工が用いられている。洋書を訳しながら独学で曲げ木をマスターし、スラットバックチェアは完成した。
小ぶりで軽く、惚れ惚れするくらい綺麗だった(勿論、伝統的な形状のまま)。
その後、英国のチェアメーカーにウィンザーチェアの制作法を学んだのだが、彼が若い頃は、スラットバックチェアと、ウィンザーチェアの両方のパーツを作っていたという。
衝撃だった。
2つの椅子は、共にグリーンウッドワーキングの技術(生木から作る技術)を用いて作られてきた椅子だった。私の中で2つの椅子が融合した。
初の椅子展はグリーンウッドワーキングの椅子をベースにした椅子を制作した。
伝統的で、経験に基づいて確立した合理的制作手法を持った椅子を出発点にし、私の椅子作りの基本としたかったからだ。
長い間の夢だったコンティニアスアームウィンザーも展示の列に加えることができた。
ようやく此処まで辿りついたと思った。作りたいと思ってから20年もかかってしまった。
実は、会場に来て下さったあるご夫婦が、「どれがエレガント?」と小さく話し合う声を耳にした。
未だウィンザーの解釈の途上にあることは自覚している、しかし、エレガントと自信を持っていえるものは少ない。それを自覚させられた瞬間だった。
まだまだ、である。
まだまだだから、自らの納得を引き寄せるためにもう少し悩まなければならない。
イメージとの乖離を減らすため、更なる技術的な向上も必要である。いきなりは難しいが、私にも、少しずつなら可能である。
今回、私の椅子を評価して頂いた方々のために、一層の向上をもって返したいと思う。
感謝と初春の挨拶にかえて。