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  1. 2009/03/28  国立に (0)

10日ほど空けただけなのに故郷の空気は明らかに緩んでいた。

30年ぶりの東京国立。学生時代を含めて5年ほど暮らしたこの街は、派手ではないけど落ち着く街で、今でもそうだった。
素朴で少しチープな感じがした駅舎は建て替えの最中だった。昔の意匠を連想させる新しい外観が覗いていた。モダンすぎず、主張しすぎないでこの街に似合う建物であればいいと思ったが、いろいろな意味で杞憂だろう。

国立駅南口を降りて国分寺方向に向かい、ガードを潜らずにまっすぐ行った所に「さかえや」という居酒屋があった。安くて旨かく、いつもサラリーマンで混んでいた。
今でもオヤジがやっているということを友人に聞いた。お店は、トイメンのビルの半地下に引っ越していて、老いたがオヤジがいた。

仕事帰りのサラリーマンで混んでいるという居酒屋風景が好きだ。仕事の憂さや疲れを1杯のビールで晴らすひと時。同じ思いを共有している勝手な幻想と仲間意識がある。それだけで落ち着けるのだ。
「さかえや」に懐かしいオヤジの姿はあったが、昔のように仕事帰りのサラリーマンで賑わってはいなかった。
時代は変わった..のか。

立川に取った宿の周辺では、年老いたオカマの立ちんぼがいた。
偶然立ち寄った小料理屋のマスターが鹿児島の出身で、我々が熊本から来たと告げると、俄に空気が和んだ。
マスターは、この界隈の説明やら忠告をしてくれた。
ここは昔、赤線地帯だった。ボッたくる店もあるから注意しないといけない。そして、立ちんぼがオカマということも彼から聞いた。
表通りから路地へ入り、宿に着くまでの間、毎日きちんと3人立つ。2人はペアで、1人は小さな椅子に掛けていた。こんな光景を目にしたのは何時だっただろうか。ずっと立ってきたのか。冬は、寒かろうと思った。
立川駅の周辺は見違えるほど賑やかに変容していたが、埃っぽくてがさつな雰囲気は昔のままのような気がした。

都会のシーンから、何事も無くたたずむ田舎の我家に帰る。
突然、音声が途切れたビデオのような感覚になる。喧騒とは無縁。春日遅遅。毎年同じ位置に水仙はきちんと芽を出し、野鳥の泣き声が降り、光は柔らかく、身体を取り巻く風が心地よい。

街での新しい出会いもいい、変わっていく街並みの中で変わらない旧友との再会もいい、そして、寡黙で飾らない田舎の大地もまたいい。

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