前回書いたように自動車の技術において、様々な車載デバイスの電動化が進んでいる。
最近(2008)発表された電動化技術の一つに電動スーパーチャージャーがある。
ターボチャージャーは排気ガスの圧力によってタービンを回すため、アクセルを踏み込んでからエンジンの回転が上るまでは過給効果が低い。つまり、ターボラグと言われる弱点がある(最近は相当の技術対策が行われているが・・)。
一般的に言えば、スーパーチャージャーはエンジンによって駆動されるため、応答性はターボに比べて優越するが、過給器の回転がエンジンに依存するため、過給圧を高めることが難しいという問題がある。
2007年初頭、フォルクスワーゲン社は、ターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせたTSIエンジンを搭載したゴルフを発売した。
異なる過給器を組み合わせることによって出力を確保しながらエンジンのダウンサイジング化を図り、それまでの大型エンジンよりも軽く、出力は同等というシステムを開発し評価を得た。
(排気量1399cc直噴エンジンと組み合わせ、2400ccエンジンに匹敵する性能と、歴代ゴルフシリーズで最高となる1000cc当たり14kmの燃費性能を実現した)
今回発表された、英国Compound Power Technologies社の電動スーパーチャージャーは、ターボと組み合わせることで、フォルクスワーゲンゴルフTSIよりも省エネで、高性能なダウンサイジングエンジンの可能性が高いデバイスである。
電動化によって、エンジン駆動よりもクイックな応答が可能である(約1/4秒で必要なトルクを発生。常用回転から7万回転まで、0.35秒で到達する)。つまり、低速域から力強いエンジン特性をプログラミングできるデバイスであり、ダウンサイディングエンジンに適していると思う。
押し並べて、電動化のメリットは、構造のシンプル化。軽量化による省エネ効果が大きいわけである。
電動スーパーチャージャーもそうであるが、機械抵抗の多い部分、マッスのある部分を電動化できれば省エネ効果は高い。究極の一つがバルブの電磁駆動だろう。電磁石によってバルブ自体がプランジャーになるということだ。これは難しいかもしれないが、取りあえず、カムシャフトの電動化なら実現性は高いのではないか。クランク軸とシンクロし、自転車のように電動アシストでも省エネ効果は高いと考えられる。
クランクのマッスやデファレンシャルも大きな抵抗である。ホイールを個々にモーター駆動し、コントロールすれば、デフもクランクも不要。そうすると、究極は電気自動車に辿り着く?
そういった極論的、あるいは(ある意味)諦念的なソリューションには、メカニズム好きの私としては面白くない。そこにつながるまでの内燃機関自体への改良の技術的な取り組みが楽しみであり、期待する部分なのだ・・。
(例えばガソリンによるHCCI燃焼(予混合圧縮着火)エンジン(簡単に言えばガソリン燃料を用いたジーゼルエンジンのような機関)等々)

参考及び引用資料
Green Car Congressから「Electric Supercharger Can Enable More Extreme, Cost-Effective Engine Downsizing」
Gizmingから「Electric supercharger promises instant power boost」
電動パワーステアリングは一般的となったが、車の諸装置の電動化が進んでいる。省エネルギー効果と使用状況に応じた精密最適なコントロールが可能なためである。
新型プリウスには電動ウォーターポンプが搭載された。電動にすることにより、エンジンへの負荷が軽減できる。プリウスの場合、燃費を2%程度向上させることができるという。
従来の機械式ウォーターポンプは、水量がエンジンの回転数に比例して増加するため、水量を任意にコントロールするのは難しいが、電動化は、任意のコントロールが可能なため、エンジンの温度によって最適な水量にコントロールすることが可能となる。
電動ウォーターポンプにすればサーモスタットを無くしても、センサーを用いて適切な水流のコントロールが可能だと思うが、素人考えか?
また、トヨタは、2006年9月に発売した「レクサスLS460」のエンジンの吸気ポートで、モーター駆動による連続可変バルブタイミング機構を採用した。
油圧式と比べて、燃費は3~4%、出力は2~3%向上し、エンジン始動直後でHC(ハイドロカーボン)の排出量が30~40%低減できるという。
ただし、採用したのは吸気側だけで排気側は油圧式。これはコスト対効果のバランス?。
ステアリングやブレーキシステムにおいても電動が提案されている。
油圧やワイヤ、機械式連動機構を用いず、各種装置を電気的に操作することをエックス・バイ・ワイヤといい、他にもスロットル・バイ・ワイヤ、シフト・バイ・ワイヤなどがある。
余談だが、新型レガシイのサイドブレーキは、所謂パーキングブレーキ・バイ・ワイヤである。
機械的な伝達機構を使わないエックス・バイ・ワイヤには、さまざまなメリットがある。
軽量化、電子制御によってセッティングの自由度が大幅に増す等。
ステアバイワイヤに関しては、エンジンルームのレイアウトの自由度が増す。シャフトがなくなるので衝突時に運転者の安全を確保しやすい。エアバッグの収納スペースが大きく取れる。右ハンドル、左ハンドルを簡単に切り替える。車両姿勢を安定化する制御がしやすい。運転者による危険な操舵を抑制できる。さらに、自動運転が可能。障害のある人でも運転が可能になったり、運転者のスキルに合わせて操舵量を制御することもできる。
勿論欠点もある、しかし、光洋精工株式会社の提案した「ステアバイワイヤ(SBW)開発による操舵性能および車両挙動安全性の向上」技術は(社)自動車技術会から2001年第51回技術開発賞を与えられている。この技術の将来的なポジティブさが評価されたのだと思う。
ドイツContinental社は2007年10月20日の技術試乗会「Technology Ride 2007」で、電動ブレーキを公開した。
ブレーキをバイワイヤ化すれば、複雑な機構が必要なABS(Anti-Lock Brake System)や、横滑り防止装置なども制御ソフトだけで実現できる。その他、軽量化や、油圧配管がなくなることで組み付けが容易になるという製造上のメリットもある。
前輪と後輪の両方のブレーキを電動化するメリットとして同社担当者は、「4輪のブレーキを個別に作動させることができ、安全性が高まる。現状ではドライバーがブレーキペダルを踏むと4輪すべて同等の制動力がかかっているが、電動ブレーキでは個々に変えることが可能になる」と、電動化のメリットを説明する。
また開発担当者は、フロントブレーキは大きな制動力が必要なことから42V電源が必要になる。現行の12V電源でも昇圧回路を用いることなどで実用化の可能性を探っている段階という。
(続く)
記事のソース
「テクのサロン」から「バイ・ワイヤー技術の先進性」
「Teck-On」から「ドイツContinental社、開発中の電動ブレーキを公開」、「ステアバイワイヤで技術開発賞を受賞」「エックス・バイ・ワイヤ」等。