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  1. 2009/08/22  習い性 (3)

我々の仕事もそうであるけれど、同じことを繰り返すことによって技術は向上していく。
それは、練習であったり訓練であったり、あるいは修行であったりする。

プロのワザは、時に無意味、無味乾燥、茫漠茫洋と思えるような時間を費やした結果、習得されてきたと思えるような側面を感じる。

私のように飽きっぽい人間にとって、まさしく「時間の無駄」としか思えないような時間をくぐって来た。
これを、忍耐として受け入れる必要があるとはいいたくはない。むしろ、それが必要だとすれば必要悪とさえ思う(誤解を恐れず言えばだ・・)。

この仕事を始めて、かなりの時間が経過するが、今も、ふと、黙して指示に従うことの意味を思う瞬間がある。黙して従う時間の積み上げの中に、今日まで積み上げられてきた技術や、解釈を共有できる理解の高まりや技の昇華がある。
また、今まで幾度か書いてきたことだが、伝統技術や民族固有の様式は「無名の工人の解釈の積分」であり、その前提として、個々の解釈に必要な無意味無味乾燥と思える時間がある。

この技術伝統の崩壊を憂うということを、書こうとしているのではない。
(個人的には、忍耐が足りない未熟者で崩壊の側にいることは自覚している)

かくあるべきであるという、技術や様式やフォームは伝統を守り保存していく力があり、熟練していくと、どのような要望にもフォームが揺らぐことなく対応が可能だと思う。
重要で大切なことだ。

ただし、このフォームが自分を縛る瞬間がある。
工人としての習い性を壊すことが難しいのだ。その難しさは、自らを呪縛しているフォームを自覚できない所にもある。
(自覚できないから、「習い性」(習慣はついにその人の生まれつきの性質のようになるという意)というのであるが・・)

デザイナーとして自由な発想や着想が求められる場合、積み上げてきた自分のフォームとの折り合いをつけていくことは難しい。
容易に切り替えられる才能があれば苦労しなのだろうが、そうではない場合、フォームの殻を壊すことに相当なエネルギーが必要となる。

何れにせよ、有能な技能者でも、優秀なデザイナーでもない私が、中途半端な両者の狭間で今日も藻掻いている。

Posted Comment

2009/08/24 9:12 PM | artisan

こんにちは ! 、語られていることは不十分な咀嚼ながらも理解したいと思います。
培ってきた“フォーム”が、新たな次元の領域を獲得しようとすることをむしろ阻害してしまうということはあるかもしれません。
ただ一方、培ってきた様々なワザ(フォームとしての)は、新たな自由な領域を創造するために必須の条件となることは屡々経験するところでもありますね。
他の素材による工芸と較べても、木工は“ワザ”、“フォーム”が重要ということもありますし‥‥。
katsuさんが仰られている対象は、さらにそれを越えたところでの撞着なのでしょうが‥‥。
「無意味無味乾燥と思える‥」というあたりは、凡庸な私には少し理解を超えるものがあります。

2009/08/26 8:27 AM | katsu

文章に説明不足という部分があるのですが、誤解を承知で、この程度で止めました。
時間をかけなければならない技の獲得はもうよく理解しています。
「無意味無味乾燥と思える‥」は、それを理解していながら、私の飽きっぽい性格ゆえの、いわば「駄々をこねている」程度にお考え下さい。
一例ですが・・
「かくあらねばならない」という教えが私を縛ります。例えば、ウィンザーのバックスピンドルは9本、サイドスピンドルは各4本。職人の習い性は忠実に守ろうとしますが、デザイナーなら自由な発想でモデファイを試みます。
私には、どちらも重要なのです。

2009/08/28 11:05 PM | artisan

ご丁寧な解釈のお言葉をありがとうございます。
>「かくあらねばならない」という教えが私を縛ります。
そうした“フォーム”は「制約」として留めるのではなく、解き放し、新たな解釈の下で、より豊かに再定義する、というわけにはいきませんでしょうか。
私は職人ならではのこだわり(=拘泥)は嫌いではありませんし、「デザイナーなら(ではの)自由な発想」も、実は優れた職人であれば、彼らならではの手法(思考スタイル)で、新たな発想によって、豊かに切り拓いていくことも可能なのではと思いますが‥‥。
(禅問答をする積もりはありませんし、困らせる意図は毫もありませんことはご理解下さい。
したがってレスを求めるものではありませんので、そのように
katsuさんの自省的なつぶやきは、関心外にはおけませんので‥‥失礼しました。)

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