2006年03月
  1. 2006年03月28日: お知らせ(一時帰国) (0)
  2. 2006年03月26日: 負けたのに楽しみましたはどういうことだ (0)
  3. 2006年03月24日: 天然酵母「白神こだま酵母」 (0)
  4. 2006年03月21日: 天然酵母もイーストも天然 (0)
  5. 2006年03月19日: 椅子制作とCAD (4)
  6. 2006年03月14日: バイオオイル (0)
  7. 2006年03月12日: スラットバックチェアー (0)
  8. 2006年03月11日: バリアーは存在する (0)
  9. 2006年03月09日: 耐震 (0)
  10. 2006年03月08日: 最強の椅子 (0)

お知らせ(一時帰国)

2006年03月28日

スピンドル加工一時帰国が迫ってきました。
前回の帰国では、様々なトラブルによりネットへの接続ができないままラオスに戻ってきました。今回も、何らかのトラブルが発生しますと、かなりの長期間ページの更新、お知らせ等の情報をお伝えできない可能性もあります。その場合、一部のカスタマーの皆様へご迷惑をお掛けする事になるやもしれません。何卒ご容赦下さい。

現在、全ラオス職業訓練短大技能展示会に向け、作品作りで慌しくしています。今回、サワナケート技術短大木工科では、学生だけではなく、教官の作品や私の提案作品も発表します。そのために大忙しで、土日も学校へ出ています。
画像は、ウィンザータイプのサイドチェアーのスピンドル、ストレッチャーを加工する現地スタッフ。

負けたのに楽しみましたはどういうことだ

2006年03月26日

「負けているのに楽しみましたとはどういうことだ」――日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化本部会で16日、トリノ冬季五輪での不振について、福田富昭選手強化本部長が各競技の強化担当者に怒りをぶちまけた。「各競技団体との個別折衝は厳しく臨む。資格を満たさなければ派遣は認めない」と話す。
2006年03月16日19時45分

五輪に2度行ってメドが立たない選手は、3度は出さなくていい――日本オリンピック委員会(JOC)理事の森喜朗前首相が23日の理事会で持論を展開。
2006年03月23日19時43分

日本オリンピック委員会は23日の理事会で、12月のアジア大会(ドーハ)と来年1〜2月の冬季アジア大会(中国・長春)の選手団編成方針を従来の国際総合大会から変更し、これまで末尾にあった「国民の期待に応えうる競技力を持つ」を冒頭に掲げることを決めた。
2006年03月23日20時34分
以上。asahi.comトップ > トリノ五輪 > 五輪ニュースより。

結果を見ると当然であろう。我々も、20位、30位、果ては予選落ちの結果を知るに付け、今回の森氏の意見には同感以上の共感を覚えた。
オリンピックエントリーが目標になっているから、結果は二の次なのであろうか。データー上も明らかに入賞できないのは確実な選手でも参加している。赤字といいつつ、我が国は予算が潤沢なのであろうか。将来への可能性が高い場合はともかく、楽しむだけで国費を使って参加してもらっても迷惑な話である。意欲と熱意と技量を持ちつつ参加できない選手がいる貧しい国々もあるというのに・・。

(まったく脈絡はないが、WBC日本チームがもたらしてくれた感動の余韻が残るのでオリンピックの結果に関し、関心が薄れる事、はなはだしいのだが)

私も国費に支えられ、シニアボランティアの活動という仕事ができている。このことはいつも心の片隅にある。そして、派遣された以上、何がしかの役に立ちたい、成果を出したいと、もがいている。微力でも前向きな努力が共感を与えるのは間違いのないことだから。

天然酵母「白神こだま酵母」

2006年03月24日

前回書いた「白神こだま酵母」の性質は凄さに驚いている。そして、ウェブ上でも随分販売されているのを知った。

秋田県総合食品研究所と工学博士 小玉健吉氏が世界文化遺産内(白神山地)で採取した腐葉土から、有用野生酵母の分離・選抜に取り組み、優れた製パン特性を持つ酵母の選抜に成功した。秋田県は県の有用財産として「白神こだま酵母」の名で商標を取得し、合わせて特許の出願(特願平11-372313)を行った。

白神こだま酵母は、従来のパン用酵母と比較し、冷凍耐性、乾燥耐性、発酵力等すべてにおいて、優れた製パン特性を有した最強の酵母である。

この酵母は、分類学上従来のパン用酵母(イースト菌)と同様、Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)に属し、清酒やビール、ワイン用酵母と同じ種類の酵母である。

これまでのパン酵母には見られない以下のような特性を持っている。

[耐冷凍性]
−30℃以下で一年間冷凍した場合、100%の生存率。
同−20℃では86%の生存率。
同一方法により市販ドライイーストを−20℃、一カ月保存試験をした場合の生存率は60%。

[耐乾燥性]
冷蔵庫で一年間保存した際の生存率は95%。
同一方法で市販ドライイーストを保存した場合の生存率は79%。

[優れた製パン性]
種起こしが不要。 発酵力が強く、仕込みから短時間で焼き上る。
トレハロースが通常の酵母の4〜5倍も多く含まれてる。
培養初期の増殖速度が非常に速く、たくましい酵母である。
国産小麦粉との親和性が高く、グルテン含有量の少ない小麦粉でも製パンが可能。

一般的に「天然酵母パン種」は、乳酸菌の混入により酸味の強いパンに仕上がる傾向があるが、この他にも一般細菌など安全性が確認されていない微生物が混入し、一緒に培養されている可能性がある。
「白神こだま酵母」は、北海道産ビートからの糖蜜など安全な原材料だけを使用し、他の微生物が混入しない方法で培養している。

このような有用な性質を有していれば、自家製パン用だけではなく、新しい工業用製パン酵母としての利用も十分考えられる(すでに行われているかもしれないが)。何しろ一度はトライしてみたいと考えている。

記事の一部は、秋田県農林水産部流通経済課「“白神こだま酵母”のホームぺージへようこそ」株式会社サラ秋田白神から引用させて頂きました。

天然酵母もイーストも天然

2006年03月21日

天然酵母パンという呼称が一人歩きを始めて久しい。何故この呼び名が定着してきたか不思議である。マスプロ的な手法で培養された、市販イーストに対して、星野さんの酵母のようなハンドメイド的手法で培養されたパン酵母への付加価値と差別化をはかった呼称なのであろうか。

酵母は英語でイーストと呼ばれる。つまり、酵母には天然も人造もなく全て天然である。市販のパン用イーストも元々は自然界に存在した天然酵母の中から、発酵力が強く、安定性が高く、パン製造に適した酵母菌を選び出し、無菌状態に近い環境で効率的に培養、増殖させたものである。

「天然酵母」と呼ばれているものは、果実の表皮ややドライフルーツから取り出して発酵及び培養するなどして作られる。しかし、我が国の多くの例に漏れず、用語の定義が明確にされておらず、非常にあいまいな表現のまま使われ、消費者に誤った認識を植えつけている可能性が高い。

混乱の極みと思うのは、楽天市場で売られている「白神こだま酵母」のキャッチコピーである。「イーストとも天然酵母とも違う「種起こしがいらない野生のパン酵母」です」とあった。
(http://www.rakuten.co.jp/auvelcraft/586495/587839/)

ちなみに「白神こだま酵母」とは、秋田県総合食品研究所が、白神山地から採取した腐葉土から、有用野生酵母の分離・選抜に取り組み、優れた製パン特性を持つ酵母の選抜に成功したもので、表現の曖昧さを避けるため、「天然酵母」という表現は避け、「白神こだま酵母」と命名したそうである。

記事の一部は、秋田県農林水産部流通経済課「“白神こだま酵母”のホームぺージへようこそ」(http://www.pref.akita.jp/ryutukei/sirakami/index.htm)から引用させて頂きました。

椅子制作とCAD

2006年03月19日

椅子制作にCADは外せない。どれだけの方が椅子制作にCADを利用しているか、定かではないが、現在私は、CADを使わない椅子設計は考えられないという状況にある。

最大の理由は角度がきちんと導き出せるということである。最終的に、制作に必要な部分の角度をプリントアウトすれば、絶対に正確ではないなと思いつつ使う、あの忌々しい分度器とおさらばできるし、分度器の不正確さを嫌い、タンジェントを用いてグラフペーパー(セクションペーパー)上で角度を求める場合でも、手持ちの定規とグラフの目盛りのズレからくるストレスからも開放できる。
実際には加工誤差があり、細かいことを言い過ぎても意味はないのはよく分かってはいるつもりだが、気分がよくないまま行う作業はできるだけ避けたいものである。

座面が台形のサイドチェアーの側幕板の柄は、通常斜めに加工される。この場合の寸法出しは結構面倒で、正確にいっているのかどうか不安がつきまとう。昔は職人の常に従いベニヤ板に原寸を引いていたのだが、気分が宜しくないので、グラフペーパーに2倍図を描いて確認したり、遂にはN88ベーシックでプログラムを組み、柄部分の正確な寸法を取り出せるようにした。
そして、参考のためにベニヤに描く原寸図との比較をしたことがあったが、ベニヤの精度でも制作には充分である事は確認できた。

CADを使えば、そのような精神的に宜しくない問題と無縁になれるのがいい。そして、慣れた椅子であれば原寸図を引かなくてもCADだけで検討と想像は可能であり、イメージとそう違いのないものができる。

問題点は、シビアに寸法が出るため、一致しなければいけない数値が微妙に違う場合があり、これが精神的に良くない。スナップポイントを拾う場合のズレか、四捨五入で数値がずれるのかは分からないが、気にし始めるとあまりよくない。
また、きちんと図学を学んでおかないと、甚だしい誤解に気が付かないまま作図を行ってしまう恐れがある。

ちなみに私は、マレーシアにいるとき、テキスト作成に必要になってCADを使い始めた。自分に合った使い勝手のいいものを探し出すのにかなり時間がかかったが、フリーソフトで感覚的に描けていけるものに巡り合い、現在もラオスでテキスト作成や椅子設計に使っている。
AUTOCADや、当時有名だったJW−CADは感覚的に使い勝手が合わずに諦めた。

全国職業訓練校家具制作コースでも、CADのレッスンを始めたほうがいいと思う(勿論行っている学校は多いと思うが・・)。最初は概念を理解するのに多少手間取るからである。

バイオオイル

2006年03月14日

ヤンマーはパームオイルを利用したディーゼルエンジン用バイオ燃料の開発を開始した。マレーシアにおいて、2007年に開発を開始し、2008年中の実用化が目標である。

世界のパームオイル生産量の40%はインドネシア、マレーシアはおよそ30%であり、安定供給されている。
マレーシアの協力も整っており、パーム園の確保、精製所建設、さらに試験プラントを立ち上げ、バイオパーム燃料の試験生産を目標とする。
理由としては、同社が長年にわたって取り組んできた地球環境対策の一環であり、環境負荷の少ない燃料の確保である。

また、ライオンはパームオイルを使用した変圧器用絶縁油を日本AEパワーシステムズと共同で開発し、来年度から販売開始する。
現在では石油系絶縁オイルが利用されているが、環境保全、資源確保のためにパームオイルを用いるという。

環境対策としてのバイオオイルの開発や利用は実に魅力的に映る。ただ少し気になることがある。マレーシアに滞在中、ヤシ園の拡大に政府は危惧しているという記事を読んだことがあるからである。

農民は収入の安定のために畑を止め、ヤシの植林に切り替えるために、野菜の確保が難しくなったり、油やしの価格が下がるというような事だったように記憶する。
当時でも、KL近郊は見渡す限りヤシが植えられていて、植林はまだまだ続いていた。原生林とはいわないが、いわゆる里山もあまりない状態だった。

現在のマレーシア政府の方針は知らないが、外貨獲得のために森林を伐採してヤシに変え、かなり深刻な森林破壊を起こしている地域もあるというのはNPOの報告でも眼にする。ヤシで覆われた山は、杉と同じく水源涵養機能に劣るのである。最も、これは大資本による大規模なプランテーション農業の弊害だろうが。

余談。ここラオスでは、現在、唯一の天然資源といってもいい、大量の木材が、タイ、ベトナムへ送られている。輸送トラックの長蛇の列を見ると恐ろしくなってくる。大木が惜しげもなく切られ、運ばれて行く。ここサワナケートの製材所でも、分厚く製材された良材が全てベトナムへ行くという。
ベトナムとラオスは政治的にもビジネスでも結びつきは強く、利権が飛び交う。ちなみにほとんどの製材所はベトナム人の経営である。

スラットバックチェアー

2006年03月12日

「最強の椅子」の補足として。
スラットバックチェアーを始めて見つけたのは、タウントンから出ている、ファインウッドワーキングマガジン誌のカテゴリー別特集「椅子」であり、その後、「生木からの椅子作り」の中で、その椅子の構造の秘密(?)にふれ、その技術を自分のものにしたいと思った。

しかし、この椅子を作るためには「木材の曲げ」を行わなければならなかった。曲げの技術が必要なのである。シェーカーのサイドチェアーのように敢えて曲げを省いている椅子もあるが(注1)、やはり後足は大きく弧を描いているほうが綺麗で優しい。
そこで洋書を訳しながら独学で曲げに挑み、これをマスターした。習えば簡単ではあるが、手探りだと大層時間がかかった。曲げに挑戦したい方は、当HP、「家具制作資料室」から、「ベンディング」を参考にして欲しい。必要な情報は揃っている筈である。
(注1:脚と貫全てに真っ直ぐな材料を用いている椅子で、これほど綺麗な椅子をほかに知らない。清楚で孤高、気品にみちている)

この椅子はシンプルではあるが、制作にあたってはかなりの数の治具(制作するための補助具)が必要で、見た目よりも厄介である。

次の問題点は、シートウィービングであった。我々は編み方が分らず、材料の入手にも手を焼いた。

昔は、木の皮、草の葉を撚ったロープ(ラッシュという)を用いていた。木の皮は、その後、綿や麻のテープやファイバースプリントと呼ばれる紙テープに変り、天然ラッシュは紙製のファイバーラッシュに変った。
現在のグリーンウッドワーカーも、シートの材料にはヒッコリーの皮などの天然素材を用いる。

スタディモデルができた時の感動は格別だった。
我々は「椅子専門」ではないが、多くの時間を椅子に割いてきた。スラットバックチェアーは、注文ではなく自分のために制作した、割りに合わない最初の椅子だった。そのモデルは故障する事もなく今だに使っている。

(現在は手元に資料がなく詳しい説明ができない、この椅子の詳細に関しては将来サイトで解説する予定でいる)

バリアーは存在する

2006年03月11日

ホテル東横インが身障者のための設備を撤去するなどの不正改造で問題となった。
反対に、身障者のためのバリアフリーで稼働率80%をキープする優良ホテルもある。営業不振が続くホテルが、身障者対応をして集客を目論む。そこには、人道的な配慮の有無に関わらず、ハンディキャップを持つ方を利用すれば利益に繋がる経営戦略が見える。その方針が利益に繋がり、ハンディ側の方々が恩恵を受ければ、ウィンウィンの構図が成立し、結果オーライということか。

ボクは以前から、日本人のハンディを持つ方々に対する根強い差別感は今だ正しく払拭されていないと感じている人間である。

子供の頃、近所にマスクを離さないおばさんがいた。疑問に思って母に聞いたことがある。はっきり答えてくれた記憶はないのだが、ヒロシマに関係しているということは記憶にある。人との交わりが少ない方だったのは子供の私にもわかっていた。肩身の狭い状況があったのであろう。一般市民が犠牲になった原因は市民を目標にした米軍にあるというのに(いや、仕掛けた日本に非があるってか?)。

人権、差別という単語は市民権を得て久しいが、発生当初、多くの水俣被害者は自己に原因があるわけでも、他に迷惑を掛けるわけでもないのに、差別を受けていた事実がある。割と最近のことである(こういう問題の改善に要する時間に比べたら)。
均質を是とする国民である。価値観が違っていればはじかれる。障害を持つ方は疎んじられたり距離を置かれてしまう。ただし、何事も組織や部落に従順で程々の場合は、何の問題も生じない居心地のいい村社会が展開する。
また、従順で平均的な場合は問題はなく相互扶助の対象になるが、相互補完できない弱者には辛い社会(行政サービスのことではなく)。

わが町でも同和や人権に対する教育は熱心に行われている。しかし、日本人の精神の裡に在る「同質」を是とする雰囲気から立ち昇る別物を排除しようとする無自覚な雰囲気や、人の数だけ価値観の違いは存在するという事を認めていこうとする努力はどれだけ行われてきたか(いや、どれだけ効果を上げてきたか)。
ファンダメンタルな部分で、そういった人権の認識の代わりに存在している「蔑視」の意識が変わらずに続いていることをホテル問題でも思った。

先入観を取り去り、人を「人格」として自然体で認め、受け入れることは、しかし、なかなか難しいことではあると思うが。

耐震

2006年03月09日

耐震強度問題で揺れている。偽装強度で建てられた住居に入居した方には、ただもう、お気の毒としか言いようがない。

最近は耐震強度の不足している旧基準のビルの補強工事も行われているそうであるが、実は阪神淡路大地震後、高速道路の橋脚の補強工事が行われたのを見て以来、疑問がある。

被災後、コンクリート製の橋脚に鋼鉄を巻いて強度を上げ、根元から折れない対策をしていた。それはそれでいい。
もしも激しい横揺れが来る。高速道に直交する向きに来た地震波の場合は、まあ分かる。では、高速道に沿う向きに来た地震の場合、強度を増した高速道は地面と同じに動く、するとどこかで止まっている部分とぶつかるのではなかろうかと思うのである。
その場合、最悪、桁が盛り上がるのではないか。また引っ張られる側は、地震が来ていない部分から切れて桁が落ちるのではなかろうかと不安になるのである。免震にして地面だけが動くというのであれば納得できるのだが・・。

それをいうなら、地面の中のガス管や水道管は揺れる部分と揺れない部分でどのようにつじつまを取っているんだい?ということになる。謎。

最強の椅子

2006年03月08日

椅子の作り手として、使い手として、最強と思う椅子がある。
スラットバックチェアー(注1)である。スラットとは薄板という意味で、背もたれに使われている薄い板を指す。また、ラダーバックチェアーやポスト&ラン(注2)チェアーとも呼ばれている。
シェーカーの椅子といったほうが一般的で分り易いかもしれない。私が制作したスラットバックチェアーも「シェーカーですね」と、言われる。しかし、シェーカーではない。シェーカーのサイドチェアーの原点である。
(注1:現在手持ちの唯一の画像。ページ最下段)
(注2:ラン、又は日本語読みだとラング(?)/ Rung:貫)

この椅子が何故、最強であり、究極と考えるのか、シンプルに見えるこの椅子に隠された驚くべき事実を述べたい。

この椅子はラテン諸国(地中海沿岸諸国)で生まれた。よって、正確にはラテン・スラットバックチェアーという。起源は古く、中世だといわれる。当時の木版画には、この椅子と同じ構造をしたスツールが描かれている。そして、現在までに世界で最も数多く作られた椅子である。

この椅子は生木から作られていた。つまり、西洋で言う所のグリーンウッドワーキングの技術で作られた椅子である。
西洋にはグリーンウッド(生木)ワーキングというジャンルの木工技術がある。生木を用いる理由は、柔らかくて加工しやすいからである。ところが、生木は多量の水分で満たさせている。そのため、乾燥に従って収縮する。通常、一般の家具製作では水分の多い(含水率の高い)木材は使えない。

職人達は木材を伐採し、必要な長さに玉切りする、次に割ることによって全ての材料を木取る。この作業が、将来的にこの椅子に故障を生じさせない重要なポイントの一つになる。つまり、割ることによって得た木材の繊維は切断されずに長いまま部材の長手方向に走っている。これは部材の強靭さを保障し、変形を最小限にとどめることになる。

次に全ての部品は旋盤で丸く削られる。動力のない時代、四角に加工するのは多くの労力が必要である。それに比べ、足踏み式の旋盤を使用し、切り倒したばかりの水分の多い材料を丸くすることは簡単である。薪割りに使う斧を用いても丸くできるのである。これは、英国で足踏み式旋盤を用いて実際に試したことがあるのでよく分かる。

当然、貫(ストレッチャー)も丸である。丸いストレッチャーは丸い脚に挿入される。つまりダボ構造である。しかし、ダボ構造は強度的に弱いという特徴がある。ご承知のように、木材の木口には接着剤はあまり効かない。そして丸穴内部は、その全周のほとんどが木口だからである。

ところが、この椅子には、構造的な弱点を長い時間をかけて解決してきた歴史がある。
脚は大まかな乾燥状態で用いる。ストレッチャーは完全に乾燥させて用いる。組み立てた後、水分の多い脚は引き続き乾燥が進む。乾燥の進行によって脚は収縮し、ストレッチャーを締めていく。これによってストレッチャーは抜けにくくなるのである。
また、前と横のストレッチャーが作る角度の二等分角に直交するように年輪を配置させる。これにより、丸脚の乾燥が進むと、前と横のストレッチャーを均等に締める。丸脚であるがために、年輪を最適な角度で配置する事ができるのである。

さらに、ストレッチャーの柄(ホゾ)部分には全周にわたってV型のノッチが切ってあり、脚は収縮によってこの部分に食い込む。また、柄の側面になる部分は、その一部を削り取って平滑に加工される。この部分はフラッターと呼ばれ、丸脚はこの部分にも食い込み、共に抜け防止として機能する。貫側面にフラッターを配置するのは、木材は縦方向にはほとんど収縮しないからである。このような機能によって柄が抜けるという事故の発生を防ぐ事ができる。生木の弱点を見事に逆手に取った構造には驚愕した。

加えて、ストレッチャーは通常、前、横共に3本づつ入っている。ある日本の木工資料によるとシャーカーの椅子はこの多接構造によって強度を保っていると解説してある。それは正しい。しかし、先に述べた木材の収縮を考慮した構造を抜きにしてはこのタイプの椅子の構造は語れない。

さらに、この椅子は通常、奥行きが浅い。この構造も後足にかかるストレスをできるだけ軽減し、故障を減じる歴史的な結論だと思う。
このような手法によって製作されたこの椅子は、ストレッチャーが緩むというような故障はほとんど発生しない。歴史が培った技術に私は呆然としたものである。

この椅子は、通常座面が小さい。始めて座ると若干窮屈に感じる。しかし、以前このブログで書いたように、慣れてくると違和感はなくなる。座面に少しばかりつけられた角度を持つダイニングチェアーよりもよほど疲れない。この椅子に安楽椅子的な休息を求めないならば何の問題もない。

小振りなために狭いダイニングスペースにも、小さめのテーブルにもフィットする。そして、何より軽いのがいい。主婦でも片手で簡単に持ち上げる事ができるので、掃除の時に実に楽だという。

デザイン的にみて、この椅子は何の加飾も施されていない(注3)。この椅子のキャラクターを決定しているのは、丸い部材、座編みによるシートである。強いて加えるならば、薄板による階段状の背もたれと、曲げ加工によって緩い曲線を描く後足である。
これらの数少ない丸い部材と天然素材によるシートにより、暖かく優しい雰囲気を醸して飽きることがない。
(注3:欧米に残る、グリーンウッドワーカーの作る伝統的なスラットバックチェアーの場合、そのオリジナリティを強く残す。むしろ、シェーカーのサイドチェアーのほうがピリオドスタイルの投影を感じる)

終わりに。
この椅子は日本ではあまり馴染みがない。そして、その構造もまた日本ではほとんど知られていない。先日逝去されたファニチャーデザイナーの佐々木敏光氏も、私の説明に驚嘆された。この技術を応用した椅子は苛酷な環境(過乾燥状態)に置かれるほど強度を増す。そして、Yチェアーやセブンチェアーほど建築家に着目されてはいないが、そこには中世から時代を超えて使われてきた永遠のスタンダード性が確かにある。
この両側面において、誤解を恐れず「最強の椅子」とタイトルをつけたのである。