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追想

2007年07月26日

墨が見えない私は山の中の工房で家具を作っている。

最近は老眼が進んで「墨」(スミ:加工を行う上でのマーク)が見えない。
薄くて見えない。暗くて見えない。罫引というマーキングを行う道具を使うが、その線と木の導管の見分けがつかない。だから、精度が落ちる。速度も落ちる。

昔、親方が、墨が見えないから「オレは勘でやっている」といっていた。目を凝らしても見えないものだから、そこそこでエーイと加工を行う。所が、矢っ張りずれているものだから、「あっちゃー」などという声がする。私は、内心「またか」と呆れていたものだが、近頃そんな親方と同じような状況になって居る。

実際、どんなに目を凝らしても見えないのである。若い頃と違って集中力と忍耐力は明らかに低下しているので、その状況が続くと苛立ち、そこそこで鑿を入れる。するとやはりずれているのである。ずれないように正確に加工しようとすると時間がかかる。
親方は、「50代じゃ良い仕事はできない」と自嘲気味に、時には多少悔しさを滲ませて述べるのだった。

独立後、上京した折、平塚の友人宅に親方と呼ばれて行った。品川で、私の分まで乗車券を買おうとしている。汽車に乗り込むまでの間、有難いことに「あんたのような・・・」というので、「僕が跡取りだったら、無垢モノしきゃやりませんよ」というと、少し複雑な顔をした。
仕事は楽しいことばかりではなかったが、今となれば、全てはいい思い出である。
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この記事へのコメント
初めまして。峯と申します。家具の研究をしてたどり着きました。ムウ・ファクトリーというネットショップをしています。
素晴らしい家具職人ですね。
じっくり読ませていただきました。
日々私も研究して行きます。
2. Posted by katsu
2007年08月07日 07:29
過分なコメントありがとうございます。
現在、もだえながら椅子作りを行っています。
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