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シーニャ、そしてラオ

2007年08月23日

工房での仕事中、足りないものがあったり、不都合や不具合があったりすると、ラオスの職業訓練短大の木工セクションで指導をしていたときのことを思い出す。

刃物が無い、工具が無い、消耗品がない、まともな機械が無い、機械が壊れるの連続だった。その度に、学科長であり、私のカウンターパートであるシーニャは、「ボーディ!」「ボーディ!」(No Good!)と騒いで、走り回る。
スタッフは鷹揚だが、現場の全責任は彼にある。本人はいたって真剣なのだが、私から見ると緊迫感に欠ける所が、少しユーモラスで憎めない。

古いフランス製のグラインダーが完全にちびってしまい、新しいものを買ってきたが、シャフトの径が合わず、丸ヤスリでグラインダーの中心の穴を拡げている。ヤスリが先にちびりそうだが無事に装着できた。
縦挽きノコギリの刃先に信じられない位ヤニがついてアメか松脂でコーティングされたようになったときには、粉石鹸を自宅から持ってきて、濃い水溶液を作り、数日漬けておいた(これは使える)。

集中集塵装置は、機械の台数の割りにメインチューブが細くて後半分は詰まった状態だった。前半分も詰まるので一人が棒でパイプを叩きながら作業を行っている。それでも水分の多い木材の切削のときには詰まってしまうので、2、3人の学生が叩く。パイプは、ゆさゆさと揺れ、とうとう、繋ぎ目(分岐点)から折れてしまった。そのうち折れることは想像できるが、だれも止めない、注文仕事だから時間が無いのだ。
シーニャは、青い顔をして板金用リベットを買ってくれと私にいうのだ。ブリキ板を何重にもあてがい、リベットで止めて修理をした。

集塵装置の配管の詰まりが進み、いよいよ使えなくなってきたので、ドリブンプーリーを小さいものに変えて回転数を上げ、解決を図ることになった。
以前よりは吸い込みが良くなったが、依然、後半分は詰まったままである。シーニャは、途中の配管の一部をジグソーで切り取り、長い棒で木屑を押し出した。穴はリベットとブリキで塞いだ。
本人は満足だが、一事が万事、このような手法だから、機械や設備はどんどんボロくなる。

本当に焦ったことが一度だけあった。
配管が詰まっている時期に、彼が顔色を失って私の所に駆け込んできたので行ってみると、配管のそちこちから煙が出ている。火災だと思ったが、原因は日本製手押し盤についている排出用ファンのベアリングの焼付による煙でほっとした。

今年の夏は猛暑だが、木工科の実習場は屋根が低く、入るだけで汗が吹き出でてくるし、作業着の襟まで塩が浮くから相当の高温だと思う。
今もシーニャは、その実習場で「ボーディ!」「ボーディ!」といって真剣に走り回っていることだろう。悪いが、思い出すと少し笑える。

そして、何でも簡単に手に入ってしまうし、少しの努力で彼らよりも数倍まともな修理やメンテができる環境があるというのに、文句ばかりの自分を少し反省するのだ。
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