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細六

2008年09月19日

家人の強い要望で薪ストーブの設置作業を始める。
煙突の取り回しや壁の熱対策など、作業は簡単そうで結構厄介。結局、床を板張りに変える作業を含め、今の私にとっては結構大掛かりな作業になってしまった。

田舎に移り住んだ頃は、この手の作業が楽しかったが、腰痛や半月板を患った膝の痛みなどで、てきぱきいかない作業に焦れている自分がいる。老いの実感・・。

そんな作業の合間、ふと若き日の家具屋での修行時代が蘇ってきた。

その日、私は親方と2人で、新築の内装の仕上げを行っていた。
三脚に登り、天井近くの壁の化粧合板を小さな細い、「細六」と呼ばれる釘で止めていた。

親方は、釘箱から細六を一つまみ口に頬張り、三脚に登って、打ち付けていく。
打っている間、次の釘の先端は舌で分けられて、口先に用意され、連続的に作業は続く。

見習いの私は、黙して同じ行動を取らなければならない。
親方の釘箱から細六を一掴みした。勇気を絞って、口に運ぶ。言うまでもないが、作業が終えた時点で余った釘は釘箱に戻される。

口に広がる鉄の風味を意識しながら三脚を登る。鉄の風味や釘箱のゴミや、戻される釘のことを考える余裕はない。
体勢を整えて作業に入る。1本目はまだいい。最初は割りと簡単に選び出せる。問題は、それを打ち初めてからだ。打ち始めた瞬間から、口の中の細六の塊を舌で選り分けなければならない。

束になった細六を舌で選り分けようとしても先端が舌に刺さり、スムースには選べない。
意識が口中に集中すると、玄翁(金槌)作業の注意が削がれる。その時、細い「細六」はわけもなく曲がってしまう。当然、釘抜き、バールのたぐいは三脚の上には持って上らない。曲がらない(曲げない)という前提なのだ。
細六の頭は非常に薄く皮膚に食い込む。だから、指でつまんで抜こうとしてもままならない。
鼻歌混じりでリズミカルな槌音の脇で、冷汗を噴出しながら、口中選別と曲がった釘との格闘を続ける私だったのだ。

運の悪いことに、その日は、施主が来た。我々は大工ではないので、めったに現場には行かないのだが、そんな日に施主が来て、三脚の下から我々を見上げて親方と話している。

指先は痛み、舌は傷つき、されど遅々として作業は進まず。そして、もう一つの危機・・。
長く居座った施主のために、私の口中の唾液が抜き差しならないほどに溜まり、最早、細六を選んで唇から先端を出そうというレベルではなくなってきていた。唾液が先に出そうになっていたのだ。
躊躇する時間はなく、私は、多量の唾液を飲み込んだのだ。

古家の改造は、「収まり」をどうするかというのが、素人の悩みどころ。
薪ストーブはいい、ただし、薪の確保が問題なのだ。
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この記事へのコメント
1. Posted by ばんば
2008年09月19日 21:11
こんばんわ、お久しぶりです。このブログ読みました。古家
の改造たいへんですね。我が家もすでに13年目ですがあちこち傷んできました。裏側の2階のベランダも腐ってきており使用不可です。風呂も自分でしましたのでボロがでてます。そのうち暇になったらと延ばし延ばしでカミサンが我慢できずに勝手に石を張りました。だんだん億劫になっている自分がいます。薪は、いつもたいへんですが私は、柄木屋さんでもらっています。鍬やゲートボールの柄を加工しているとこでわき落としを買ってます。1M30cmの3センチ角くらいで3等分するとちょうどいいです。昨年は、2t車で今年の分まであります。5000円でした。そちらでさがされたらいかがでしょうか。この樫材と間伐材を混ぜて使っております。ではまた。
2. Posted by artisan
2008年09月20日 18:31
木に関わる職人仕事にとり釘打ちは欠かせない技能ですが、今の家具屋は抽斗の組み立ての時に使うぐらいでしょうか。
その程度でも私は寸五の釘をほおばります。独特の“鉄の風味”が好きだからではありませんが、どことなく職人仕事ならではの作法と思うからでしょうか。
そうしたことはやはり老練な親方の下で学ぶことでしか得られないものかもしれません。
そうであれば、現今、新進の“木工家”にはみられない作法であるのでしょうね。
‥‥飲み込んだ唾液と共にあった多量の細六の行方はいずこに?

3. Posted by katsu
2008年09月20日 19:51
BNB様、コメントありがとう。
ご無沙汰しています。改造は本日無事終了しました。疲れ果てました。今思えば、ギャラリーを作った頃はまだ元気でした。
今度、鍋+熱燗でほろ酔い(いや、泥酔?)なんていいですね(マジに)。ではまた。
4. Posted by katsu
2008年09月20日 20:19
artisan様コメントありがとうございます。
先板を止めるための釘を仮打ちした側板を作業台(座敷)の左右に並べ、側板と先板を組み、それに前板を打ち付けて重ねていきます。これも慣れないと結構難しいものです。遠い昔のことです。
独立以降、私は釘を使わなくなり、「包嵌込打付接」(名称は「室内・インテリア事典1」より)+木ネジ+角ダボ、もしくはダブテールにしています。
親方は、椅子張り屋さんの太鼓鋲打ちのスピードはすごいといっておりました。
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