私の徹夜本

私の徹夜本 9(気分はだぼだぼソース)

2006年02月28日

若い頃(せいぜい30代前半まで)に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■気分はだぼだぼソース:椎名誠
一世を風靡した(?)椎名誠の初期のエッセイです。他に、「さらば国分寺書店のオババ」「哀愁の街に霧が降るのだ」なども同様に非常に強く記憶に残っています。

日常の些細時をこの人ほどユーモラスに、「そーなんだよ」と共感させる視点を持ち、それを独特の文体で実に巧みに表現してしまうエッセイストを知りませんでした。

日常感じる、ちょっとしたこと、何か変だけれども、ちきんと言葉に置き換えたり、分析することもなくそのまま見過ごしてしまうことを掘り下げてしまう観察の巧みさ。私だったら数行で書き終えてしまうことを、そのテーマで数ページ書ける、読ませるというのはすごい才能です。

初期の様々な雑誌の批評は実に爽快でしたが、有名になるに従っておとなしくなっていったのは残念ですが致し方ないところです(仁鶴もたけしも最初の頃のラジオDJではすごかったですから)。

有名な方で、大量の著作があり、ここで取り上げる必要も無い位ですが、取り上げたいインパクトがあったわけです。基本的に才能があって健全なんですね。

私の徹夜本 8(真空地帯)

2006年02月01日

若い頃(せいぜい30代前半まで)に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■真空地帯:野間宏
徹夜本とはいい過ぎかもしれませんが、何故か印象に残っています。
ネットで調べてみても、反戦小説、旧日本軍批判の代表として紹介されている場合がほとんどですが、純粋に物語として読んでも、前半は少し退屈ですが、後半の盛り上がりはなかなかのものです。毎日出版文化賞受賞作品。
同じようなジャンルで、大作「神聖喜劇」 大西巨人著があります。そのうちに読んでみたいと思っています。

この小説にも書いてあるような状況、軍隊内部の非人間性はよく語られることですが、私が思うのは、例えば軍隊という特殊な環境下において、日本人はこのように非人間的な行動をとるようになるものなのか、それは事実か否か、事実とするならば、それは何故なのかということを思います。
そうであるなら、その原因を追究し、フィードバックしていかなければなりません。敵が内側にいるような状況では戦えませんし、批判だけでは改善しないからです。これは軍隊のみならず、企業においてもある種同様だろうと思います。

余談ですが、日本人の常に共に行動する。行動しなければ仲間外れという意識は、実に特殊だと考えています。JICAの派遣前研修でも私は一人で昼飯を食べていました。飯時位は一人で好きなものを探して食べたいからです。しかし、このような行動は仲間外れの原因になります。最後には、私は一匹狼タイプだからと言われるのです。海外で長く暮らしてきた経験を持つ方が多いグループでもこれです。実に不思議で面倒です(私が変わっているということは充分に考えられますが・・)。

日本人は、基本的に過干渉でお節介が好きなのです。そして、同じでなければ納得しません。しかし、自分と同じではないのが普通ですから、他人の価値、違いを認めることが大事なのです。これが難しいのです。日本人には。
また、困った方を助けた場合、欧米人はすぐに立ち去るが、日本人の場合は感謝されるまで待つという話を聞いたことがあります。これも、基本的にお節介根性の表れです。優しいからこそクールに振舞うのです。

日本人はバラバラに見えて、命令一閃、団体で行動するのは向いているのですね。チャイニーズは、自分のことしか考えないから最後までバラバラ。自分しか信じないので、一族一派で固まるのです。
(余談の余談。徹底的に無駄を省き、高品質、効率的なモノ作りにができるのに、日本の営業は20年同じことをやっていると、日本で実績を上げる中国人経営コンサルタントがいっていました。今だ、無反省な精神主義が跋扈しているというのです。旧軍隊の体質にも似たとまではいいませんが、この二面性は不思議です)

マレー人(ブミプトラ)やラオス人は、実に他人を尊重します。だから、余計なことを言いません。仮に間違っていてもあまり口を出しません。温厚な人間関係を重視します。だから自分さえ良ければいいといわれる場合もありますが、中華系とは違うと思います。ただし、お節介をしませんから進歩が遅れるという面はあるように思います。文化の違いは興味深いものです。

私の徹夜本 7(竜馬がいく)

2006年01月14日

若い頃(せいぜい30代前半まで)に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■竜馬がゆく:司馬遼太郎
司馬遼太郎の最高傑作です。今更私が、ここで何かを述べる必要もありますまい。
幕末を一気に駆け抜け、去っていったこの若者への熱い思いと深刻な喪失感を忘れることができません。

龍馬は生きて時代を変え、司馬氏によって再誕し、今も人に勇気と感動を与え続けています。もはや人間の格、霊格が違うとしか私には言いようがありません。

「天に意思がある。としか、この若者の場合、おもえない。天が 、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、その使命がおわったとき惜しげもなく天へ召しかえした。この夜、京の天は雨気が満ち、星がない。しかし、時代は旋回している。若者はその歴史の扉をその手で押し、そして未来へ 押しあげた」
これは書中、司馬氏が加えた龍馬への感想です。

軽薄と言うなかれ。しかし、嫁さんの理想のヒーローは、以前紹介したアダルトウルフの「犬神明」「ユリアヌス」。そして、読後は龍馬に惚れこんでしまったのです。

私の徹夜本 6(人民は弱し官吏は強し)

2005年12月24日

若い頃(せいぜい30代前半まで)に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■人民は弱し官吏は強し:星新一
SFで有名な星新一が父の生涯を描いたもので、氏としては珍しいノンフィクションです。

父・星一(ほしはじめ)が興した星製薬の発展と、当時の政府官憲の横暴、凄まじい権力乱用によって破産に至った過程を描いたもので、信じられないような当時の日本人官憲の怖さを教えてくれ、やり場のない憤りを感じます。

記憶も薄れ、手元に資料がありませんので、以下、「信兵衛の読書手帖」から引用させていただきました。

星一は、星製薬という会社を創設した実業家であり、戦後は初の参議院選挙で最高点で当選して政治家としても名を残した。星一は、第一次大戦に敗れ困難に直面していたドイツの科学界に資金援助を行ない、特に、アンモニア合成技術の開発でノーベル賞を受賞したフリッツ・ハーバーとの親交は有名である。

作者の実父・星一氏の自伝、星製薬の創業、発展、そして挫折の歴史を描く。それと同時に、本書は官憲の横暴な権力行使の実録、と言って良い内容。
アメリカでの苦学留学から帰国した星一氏は理想に燃えて星製薬を創業し成功するが、最後には官憲による無茶苦茶な妨害により破産に至る。当時の官憲、政治というのはこんなにもひどいものだったのか!とやりきれない思いがしますが、戦後の日本は本質的に変わり得たのでしょうか。

私の徹夜本 5(悪霊)

2005年12月13日

若い頃(せいぜい30代前半まで)に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■悪霊:高橋信次
大学の頃、故郷の地方新聞(大分合同新聞)の本の紹介欄にリストされていたものです。「このような人生論もある」というようなコメントを記憶しています。

心の病気や不幸は本人の心の在り方に原因があり、それに同調したあの世の下級霊の働きによって様々な心の病を招くというもので、その事例と正しい心の在り方を述べています。

オカルティックな内容で引いてしまう方もいるでしょうが、霊魂や転生輪廻、人生の意味等に興味を抱いていた当時の私にとって、この世とあの世の意味、人の生きる意味を見えざる世界の実相を通して訴え、強烈な印象を与えた一冊でした。

その後、著者は宗教団体を起こしたようですが、その後の活動や風評には関知するつもりはありません。印象深かった一冊として紹介しました。

私の徹夜本 4(背教者ユリアヌス)

2005年11月20日

若い頃(せいぜい30代前半まで)に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■背教者ユリアヌス:辻邦生
以前にも辻邦生作品の「回廊にて」を紹介しました。同時に紹介するのはもったいないため、あえて分けました。「回廊にて」も良いのですが、私の中ではこちらが本命。

歴史小説としても恋愛小説としても十分に読ませてくれる叙事詩です。歴史背景の史実との違いを語る方もいますが、私はその辺りの知識を持ち合わせていませんので、純粋に作者の「生」への、主人公への投影に共感しながら読みました。会社勤めをしていた当時、スレてささくれた気持ちでいたワタクシが、「人間への信頼」をテーマにする辻氏の著作を貪ったギャップが自分でも滑稽(でもないか)。

物語はローマ帝国におけるユリアヌス皇帝の生涯を描いたもの。「背教者」とは、当時国教として勢力をのばしてきたキリスト教を否定し、古代ギリシアの神々の信仰を復活させようとしたことからつけられた。
参照:。八方美人な書評ページ

終わるのが惜しいと思いながら一気に読み終え、読後の喪失感が長く尾を引いた一冊です。
文庫本でもボリュームがあって最初は引いてしまいますが、たちまち引き込まれ、最後はそのボリュームに感謝します。

嫁さんの理想の恋人は、最初に紹介したアダルトウルフの「犬神明」でしたが、これを読んで感動。主人公「ユリアヌス」に惚れ、理想の恋人が二人になってしまったのです。

参考までにアマゾンコムから本書の書評の一部を引用させて頂きました。
芸術としての文学:2003/06/14
レビュアー:空を飛ぶネコ

文学が芸術とかけ離れて久しい。
感覚に頼ったような、確かに一度くらいはお付き合いできる作品はいくらもある。
職人芸でブランド品を供給してくれる作家もたくさんいる。
でも違う。
文学本来が持っていた格調高い芸術性を追求した、まれな作家が辻邦生。
そしてその白眉たる、日本文学の誇りとも呼べる作品が本作である。
音楽的で、絵画的で、光り輝くような、それでいて抑制の効いた文体は、それだけでも至宝のようで、まさに読み終わるのが惜しくなる、そんな作品と言える。
辻邦生を読まずして「本読み」というなかれ。

私の徹夜本 3(番外編・光る風)

2005年11月13日

若い頃に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介しています。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。今回は番外編としてコミックを紹介します。

■光る風:山上たつひこ
1970年代の少年マガジン誌において、ポリティカルフィクションという副題で連載されていた漫画です。当時の少年マガジンは「あしたのジョー」「巨人の星」「愛と誠」など、梶原一騎原作漫画がヒットした同誌の黄金時代といってもよく、そんな中で極めて異彩を放っていた作品でした。大学時代に単行本で読み直し、改めて強いインパクトを受けた作品です。

大まかなストーリーは、時代は変転し、また軍国主義がやってきた時代で抵抗する主人公を描いた異色作で、スリリングなストーリー展開と意表をつく作画表現が際立った存在を示しました。
単行本に同梱されていた「回転」も非常に印象深い同氏の短編です。

また、同世代における印象的な作品に、辰巳ヨシヒロ作、「東京うばすて山」「鳥葬」等があります。地味でしたが、社会の底辺でもがく人々を独自の感性で切り取り、社会の病巣を描いて印象的でした。
これもほぼ同時期の少年マガジン誌に掲載されました。現在では考えられないような人間への視点をテーマにした作品を載せた編集者の良心に驚きます。

私の徹夜本 2(回廊にて)

2005年11月07日

HPなどをするようになってから小説のたぐいをほとんど読んでいませんが、若い頃に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介します。現物が手元にありませんので曖昧な記憶での感想をお許しください。

■回廊にて:辻邦生
芸術を通して「生」の意味を問う主人公の魂の奇跡を、日記と関係者の証言をカタカナ混じりの特異(?)な、透明感ある文体でドキュメンタリー風に描き、爽やかで余韻の残る読後感を与えてくれます。それまでの日本人作家とは一線を画す崇高な印象を受けた記憶があります。

あまり紹介される機会はありませんが、「天草の雅歌:辻邦生」も私のお勧めです。長崎奉行通辞、上田与志と混血の美女コルネリアの情愛と惜別を描いたもので、一級の恋愛小説に仕上がっています。結末の深い余韻が心を揺らします。

辻邦生(1926〜1999)
東大仏文科卒。昭和32年、フランス・パリ大学に留学。34年、ギリシャに旅行してパルテノン神殿に接したのを機会に「強い創作衝動に駆られて」、短編「見知らぬ町にて」「城」を執筆、実質的な作家生活に入った。
帰国後の38年、長編小説「廻廊にて」で近代文学賞を受賞。死の影を帯びた滅びの感覚と永遠性の希求という独自のテーマは、その後の辻文学を大きく方向づけるものとなった。43年「安土往還記」で芸術選奨新人賞を、47年には「背教者ユリアヌス」で毎日芸術賞を受賞し、以後、歴史の転換期を生きる人物に新たな光を与え、人間存在の本質を鋭く探る独特の歴史小説を次々と発表した。
(産經新聞 99.07.30より)

私の徹夜本 1(アダルトウルフガイシリーズ)

2005年11月05日

HPなどをするようになってから小説のたぐいをほとんど読んでいませんが、若い頃に読んだ本の中で、時間の経つのを忘れるほど夢中になれたものを紹介したいと思います。

■アダルトウルフガイ・シリーズ:平井和正
最も印象深く、お勧めの徹夜本がこのシリーズです。新書本サイズで出ていました。購入のきっかけは忘れました。ハードボイルドSFです。それまでまったく興味のなかったジャンルでしたので、訝しげに買って帰りましたが、たちまち主人公、犬神明の虜になってしまいました。シリーズは現在途中中断。

続いて読んだ嫁さんもすっかりウルフ犬神明のファンになり、理想の恋人といっていました。実際、圧倒的な勇気と希望を与えてくれるウルフへ、そんな思いの女性ファンは多く、いまだに再開を熱望する声は多いそうです。ウルフガイシリーズ関連の掲示板を読むといまだに人気の高さが窺われます。読んで後悔しないシリーズだと思います。

他に、少年ウルフガイ・シリーズもあり、こちらもお勧め。こちらは1995年に完結。どちらも読み終えるのがもったいないシリーズです。