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メカニズム
画像は、短大時代に指導した学生の1986年度卒業制作作品。
トロコイド推進機構を利用した遊具である。
この卒業制作の真の目的は、トロコイド推進機構はどんなものなのか、利用できるものなのか、応用できるものなのかを確認するためだった。
(ペダル駆動による遊具として具現化するには、多少無理がある感じは否めなかったが)
今日のように、高性能バッテリーがあれば、モータ駆動による室内用途の可能性を探っていたかもしれない。
兎も角、トロコイド推進機構という、一種のオムニドライブには魅力があったし、効率は低そうだったが、ハンディキャップのある方や、子供用として、可能性を感じたのだ。
◎トロコイド推進機構とは
回転板に取り付けられた駆動輪(今回の場合キャスターを使用)は、回転板の回転と共に、出力軸を中心とした公転運動を行う。
駆動輪は、回転板にキングピン支持され、タイロッドに相当するプッシュプルリンクを介し、コントロールレバーと連結されている。
コントロールレバーの操作により、駆動輪は別々の方向に首を振る。
つまり、駆動輪は、公転運動を行いながら、周期的に首振り運動を行うことにより、一定方向にコーナリング フォースが発生する。
首振り角度の変化量が増せば、コーナリングフォースも増加するため、連続的な増速が可能であり、減少させれば、ブレーキとして作用する。
また、コントロールレバーを任意の方向に傾斜させることにより、任意方向(全方向)に進むことができる。
つまり、特別の操縦装置と変速装置なしにコントロールレバーだけで、進行方向、速度、ブレーキをコントロールすることができるのである。
ちなみに、駆動輪の描く軌跡が外トロコイド曲線(注1)となる。
最高時速は4km程度に想定した。
このブログは研究紀要ではないので、詳細は割愛するが―
実際に子供による操縦で、この機構の検証と特性は確認できた。
見事、自由自在に動き回ることができたのである。
ただし、プロトタイプであること、限られた予算のため、余計な加工はできない。そのために重くなったこと、加工精度の問題で擦動抵抗が大きかったこと等により、子供による駆動は大変だった。
スタート時に、コントロールレバーを最大まで押してしまうため(首振りが最大になる)、スタートが難しいという問題があった。
これは、首振り角度を取りすぎたという問題からきており、事前に想定できなかった部分である。
率直に言って、個人的には、モーターか、エンジン駆動にしたら、実に楽しい乗物になるだろうなという感想を持った。
今回も、機械科とのコラボレーション。
メカ部分の基本設計は私が行い、詳細設計と加工は機械科(学生)が行う。
また、発明者でもある、ワンダービークル技術研究所の六車義方氏の了承と協力の下で行った。
デザイン(スタイリング)的には評価対象外だと思っている。それ以前の、可能性の確認としての、プロトタイプ(スタディモデル)段階と理解して欲しい。
短大在職中、最も苦労したテーマの一つ。
しかし、喜びも最大だった。教育機関勤務の醍醐味。ただし、客観評価は別として。
注1:動点が回転体の外側にある場合の、動点の描く軌跡(高トロコイド(Superior Trochoid)ともいう)。

靖国神社遊就館を訪れた。
ゼロ戦を見るためである。
始めて見る「零式艦上戦闘機52型」は、靖国神社遊就館のロビーに置かれていた。
あっけなく目の前に現れたゼロ戦だった。
機体側面の日の丸が鮮やかに飛び込んできた。
その姿に、ちょっと感動した。
「おぉ」って感じだった。
それまで目にしてきた写真のゼロとはまったく違った。
様々な思いが浮かんでくるが、一言で言えば、
「洗練」
そこには、世界を席巻した、当時最先端のエアクラフト技術の粋が佇(たたず)んでいた。
機能がそのまま形態を決定した戦闘機としての造詣。
画像では絶対に伝わらない。
現物だけが伝える重み。
様々な概念が結晶化している。
設計者の思い、エンジン、機体の製造能力。
設計に課せられた数え切れない機能を、この造詣に集約した設計陣と、量産した当時の技術力、広い裾野を必要とする工業力に改めて思いを馳せる。
厳しい機能要求
高い設計能力
広範な周辺技術
加工技術
製造(量産)技術
製造装置を支えるマザーマシン
品質管理
整備性
よくやったものだと思う。
勿論、途上技術も多々あることは理解している。その上で、これだけのものを製造し得たことに、そして、結果を出し得たことに誇りを禁じ得ない。
プロペラの奥にはシンプルな副列の、ラジアルエンジンがあった。
整備性も極めて高そうである。
所で、以前このブログで書いた、プロペラの反トルク対策であるが、垂直尾翼は、「日経Tech-on」での記事のように、尾翼断面が左右非対称であるようには見えなかった。
改めて調べたのだが、垂直尾翼後縁に取り付けられた固定タブの角度を調整し、トルク対策をしていたようである。
当然、エンジンや垂直尾翼のオフセットはなし。
今回は元工業デザイナーとして、秀逸な日本の工業生産品を眺めたつもりである。
しかし、遊就館に展示されている特攻兵器には苦い思いを禁じ得なかった。
戦いは避けられない場合がある。
しかし、人命を賭した特攻はいけないし、許されるものではないと思っている。
ゼロ戦パイロット坂井三郎も反対し、現場の士気が下がったと著書の中で述べている。
ともあれ、多くの犠牲を強いたが、我国の戦いをもって西欧の植民地支配が終焉を迎えたのは、間違いのない事実である。
これはもっと評価されていいと思っている。
遊就館のゼロ戦52型。「happyleaf’s blog」さんの許可を得て掲載しました。
シンプルな機構で全方向に移動できる車両は「夢」だと思う。
大学や研究機関でも、様々なオムニドライブの研究がなされているが、シンプルなものは、なかなか無い。
今回のホンダの提案(前回の記事)は、いいセンで、実用の可能性が高い気がする。
ホンダの機構は「Holonomic Drive」(画像上)をイメージするが、それを超えた「目から鱗」ものだ。
ただし、1輪につきモーターが2つ必要なので、今回のような提案か、車椅子のような2輪車程度がいいのかもしれない。
また、トラクションを得にくい弱点があるから、福祉車両のように低速で軽量、あるいは原子炉内部のような特殊環境での点検、軽作業ロボット等に適正があるかもしれない。
同じく前回紹介した、「Omnix Technology Systems」社の「Omni-Directional Wheel」は、1973年、スェーデンの発明家「Bengt Ilon」と「Mecanum」社によって全方向ホイールのアイデアを具体化されたものである。
「Omnix Technology Systems」社の「Omni-Directional Wheel」は、「Mecanum Drive」と呼ばれるもので、若干「Holonomic Drive」に似ている。ただし、ホイールに斜めにローラーが付いている。
各ホイールに付いているローラーの向きは図のようになっている。
図右側ホイールが、前後共内回り、図左側ホイールが前後共外回りに回転すると右に横移動する。
前後の回転に差を生じさせると斜め方向に進む。
複雑なホイール、コントロール。トラクションが低く、ホイールの対角方向に進む場合の駆動力が弱いという弱点がある。
参考にさせて頂いた、「Omni-Directional Drive System」の文献は、「Ian Mackenzie」氏のもので、「FIRST Robotics Canada」のサイトにある。
ホンダがオムニドライブシステム(Honda Omni Traction Drive System)を持つ電動1輪車(試作機)を発表した。
体重移動だけで方向や速度をコントロールできるというもので、前後は勿論、真横やどの斜め方向にも移動できる。
しかも、実にシンプルな構造でそれを実現。車体も大層コンパクトに仕上がっているのが素晴らしいと思う。
アシモの研究で培った姿勢制御技術を応用し、傾斜センサによって、ドライバがどの方向にどの程度の速度で移動したいのかを判別。そのデータに基づき、傾きを回復させる緻密な制御を行い、なめらかで機敏な動きと、体重移動だけの簡便な操作性を実現させた。
この試作機のオムニドライブ機構は、複数の小径車輪を一列につなぎ合わせて構成した大径車輪の両サイドにドライブギアを有し、2つのドライブギアは、各々独立したモーターで駆動される。
両サイドのドライブギアの回転方向を合わせれば、大径車輪が回って前後進し、回転方向を逆にすれば大径車輪は回らず、小型車輪だけが回転して真横に移動することになる。
また、2つのモータの回転速度を変えることで,大径車輪と小径車輪が複合的に動き、斜め方向に移動することができる。
ホンダの機構は、従来のオムニダイレクショナル ドライブ(Omni-Directional Drive)機構の中でも、在りそうで無いユニークなものである。
オムニドライブは、停止位置から全方向への移動が可能な推進装置で、実用化されれば広範囲な利用が期待でき、昔から様々なアイデアが出されてきたが、実用例は少ないと思う。
私は、宮城職業訓練短期大学校時代に、六車義方氏の特許であるトロコイド推進装置を応用した遊具を、学生の卒業研究として制作したことがある。
これは、回転する円盤下に3~6個程度のキャスター状の小型車輪を取り付け、小型車輪は連結棒によってコントロールバーと繋がり、首を振る。その首振り方向、角度によって移動方向と速度が変えられるという、オムニドライブの一種であった。
全てのコントロール(方向、速度、ブレーキ)は、1本の操縦桿で行うことができ、小型車輪の軌跡がトロコイド曲線を描く。
ちなみに、オムニドライブ機構(Omni-Directional Drive)の長所は、まさしく全方向に移動できるということ。
短所は、機構が複雑、重い、強度への不安、駆動力不足(駆動ロスが大きい)等である。そのため、家屋内、介護、車椅子等の低速、短距離で小回りが利くような用途に威力を発揮すると思われる。
画像右は、「Omnix Technology Systems, Inc.」のオムニドライブ用ホイール。前後輪を逆回転させると真横移動ができる。
前回書いたように自動車の技術において、様々な車載デバイスの電動化が進んでいる。
最近(2008)発表された電動化技術の一つに電動スーパーチャージャーがある。
ターボチャージャーは排気ガスの圧力によってタービンを回すため、アクセルを踏み込んでからエンジンの回転が上るまでは過給効果が低い。つまり、ターボラグと言われる弱点がある(最近は相当の技術対策が行われているが・・)。
一般的に言えば、スーパーチャージャーはエンジンによって駆動されるため、応答性はターボに比べて優越するが、過給器の回転がエンジンに依存するため、過給圧を高めることが難しいという問題がある。
2007年初頭、フォルクスワーゲン社は、ターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせたTSIエンジンを搭載したゴルフを発売した。
異なる過給器を組み合わせることによって出力を確保しながらエンジンのダウンサイジング化を図り、それまでの大型エンジンよりも軽く、出力は同等というシステムを開発し評価を得た。
(排気量1399cc直噴エンジンと組み合わせ、2400ccエンジンに匹敵する性能と、歴代ゴルフシリーズで最高となる1000cc当たり14kmの燃費性能を実現した)
今回発表された、英国Compound Power Technologies社の電動スーパーチャージャーは、ターボと組み合わせることで、フォルクスワーゲンゴルフTSIよりも省エネで、高性能なダウンサイジングエンジンの可能性が高いデバイスである。
電動化によって、エンジン駆動よりもクイックな応答が可能である(約1/4秒で必要なトルクを発生。常用回転から7万回転まで、0.35秒で到達する)。つまり、低速域から力強いエンジン特性をプログラミングできるデバイスであり、ダウンサイディングエンジンに適していると思う。
押し並べて、電動化のメリットは、構造のシンプル化。軽量化による省エネ効果が大きいわけである。
電動スーパーチャージャーもそうであるが、機械抵抗の多い部分、マッスのある部分を電動化できれば省エネ効果は高い。究極の一つがバルブの電磁駆動だろう。電磁石によってバルブ自体がプランジャーになるということだ。これは難しいかもしれないが、取りあえず、カムシャフトの電動化なら実現性は高いのではないか。クランク軸とシンクロし、自転車のように電動アシストでも省エネ効果は高いと考えられる。
クランクのマッスやデファレンシャルも大きな抵抗である。ホイールを個々にモーター駆動し、コントロールすれば、デフもクランクも不要。そうすると、究極は電気自動車に辿り着く?
そういった極論的、あるいは(ある意味)諦念的なソリューションには、メカニズム好きの私としては面白くない。そこにつながるまでの内燃機関自体への改良の技術的な取り組みが楽しみであり、期待する部分なのだ・・。
(例えばガソリンによるHCCI燃焼(予混合圧縮着火)エンジン(簡単に言えばガソリン燃料を用いたジーゼルエンジンのような機関)等々)

参考及び引用資料
Green Car Congressから「Electric Supercharger Can Enable More Extreme, Cost-Effective Engine Downsizing」
Gizmingから「Electric supercharger promises instant power boost」
電動パワーステアリングは一般的となったが、車の諸装置の電動化が進んでいる。省エネルギー効果と使用状況に応じた精密最適なコントロールが可能なためである。
新型プリウスには電動ウォーターポンプが搭載された。電動にすることにより、エンジンへの負荷が軽減できる。プリウスの場合、燃費を2%程度向上させることができるという。
従来の機械式ウォーターポンプは、水量がエンジンの回転数に比例して増加するため、水量を任意にコントロールするのは難しいが、電動化は、任意のコントロールが可能なため、エンジンの温度によって最適な水量にコントロールすることが可能となる。
電動ウォーターポンプにすればサーモスタットを無くしても、センサーを用いて適切な水流のコントロールが可能だと思うが、素人考えか?
また、トヨタは、2006年9月に発売した「レクサスLS460」のエンジンの吸気ポートで、モーター駆動による連続可変バルブタイミング機構を採用した。
油圧式と比べて、燃費は3~4%、出力は2~3%向上し、エンジン始動直後でHC(ハイドロカーボン)の排出量が30~40%低減できるという。
ただし、採用したのは吸気側だけで排気側は油圧式。これはコスト対効果のバランス?。
ステアリングやブレーキシステムにおいても電動が提案されている。
油圧やワイヤ、機械式連動機構を用いず、各種装置を電気的に操作することをエックス・バイ・ワイヤといい、他にもスロットル・バイ・ワイヤ、シフト・バイ・ワイヤなどがある。
余談だが、新型レガシイのサイドブレーキは、所謂パーキングブレーキ・バイ・ワイヤである。
機械的な伝達機構を使わないエックス・バイ・ワイヤには、さまざまなメリットがある。
軽量化、電子制御によってセッティングの自由度が大幅に増す等。
ステアバイワイヤに関しては、エンジンルームのレイアウトの自由度が増す。シャフトがなくなるので衝突時に運転者の安全を確保しやすい。エアバッグの収納スペースが大きく取れる。右ハンドル、左ハンドルを簡単に切り替える。車両姿勢を安定化する制御がしやすい。運転者による危険な操舵を抑制できる。さらに、自動運転が可能。障害のある人でも運転が可能になったり、運転者のスキルに合わせて操舵量を制御することもできる。
勿論欠点もある、しかし、光洋精工株式会社の提案した「ステアバイワイヤ(SBW)開発による操舵性能および車両挙動安全性の向上」技術は(社)自動車技術会から2001年第51回技術開発賞を与えられている。この技術の将来的なポジティブさが評価されたのだと思う。
ドイツContinental社は2007年10月20日の技術試乗会「Technology Ride 2007」で、電動ブレーキを公開した。
ブレーキをバイワイヤ化すれば、複雑な機構が必要なABS(Anti-Lock Brake System)や、横滑り防止装置なども制御ソフトだけで実現できる。その他、軽量化や、油圧配管がなくなることで組み付けが容易になるという製造上のメリットもある。
前輪と後輪の両方のブレーキを電動化するメリットとして同社担当者は、「4輪のブレーキを個別に作動させることができ、安全性が高まる。現状ではドライバーがブレーキペダルを踏むと4輪すべて同等の制動力がかかっているが、電動ブレーキでは個々に変えることが可能になる」と、電動化のメリットを説明する。
また開発担当者は、フロントブレーキは大きな制動力が必要なことから42V電源が必要になる。現行の12V電源でも昇圧回路を用いることなどで実用化の可能性を探っている段階という。
(続く)
記事のソース
「テクのサロン」から「バイ・ワイヤー技術の先進性」
「Teck-On」から「ドイツContinental社、開発中の電動ブレーキを公開」、「ステアバイワイヤで技術開発賞を受賞」「エックス・バイ・ワイヤ」等。
以前、若干触れたことのあるマツダのアイドリングストップ技術(i-stop)。
マツダは、2005年第39回東京モーターショーにおいて、スターターモータを使わないでエンジンを再始動させる「スマート アイドリング ストップ システム」を発表した。
このアイデアで、2006年第16回「日経BP技術賞:機械システム部門賞」を受賞している。
構造を簡単に説明すると、圧縮行程にあるシリンダーに燃料を極少量噴射して点火し、クランクを逆回転させる。そのとき膨張行程にあったピストンは逆に押し上げられる。そこに再度燃料を噴射し、点火することでピストンは再び下降し(正常回転)、エンジンは再始動するというものである。
始動用モーターを使わないでエンジンを再始動できるアイドリングストップ機構のため、バッテリを強化せず、ハードウエアの追加を最小限に抑えられる。
モータを使った再始動では0.7秒程度かかるものが、このシステムでは0.3秒ですみ、10.15モード燃費も約14%改善するというものである。
ほぼ空気量が同じくらいの位置でエンジンを止める(ピストンを、ほぼ同じ位置で止める)必要があるため、オルタネータをブレーキとして使う。クランク位置を精密に制御するため、精度の高い位置センサが必要となる。また、正確な燃料噴射が必要となるため、当然ながら直噴エンジンが前提となる。
このアイドリングストップ技術を搭載した新型車(マツダ アクセラ)が、2009年半ば、ようやく国内発売される。
当初のアイデアは、スタータモータを使わずにエンジンを再始動することだったが、実用化にあたり、予備回転用の燃料使用のため、燃費改善効果が薄いことが分かり、再始動時はスタータモータを併用する方法に変更された。
スタータモータでエンジンを回転させるのと同時に、燃料を噴射して点火することで、使用燃料を当初よりも減らし、スタータモータの使用時間も短縮、再始動時間を短縮した。
結果的に、0.35秒という短時間での再始動を可能にした。これはエンジンの再始動をまったく意識する必要のない感覚とのこと。
素早い再始動を実現するには、ピストンの停止位置が非常に重要となる。クランク角で30~120度の範囲において、速やかな再始動を行うことができるめ、常にこの範囲にピストンが停止するように制御する必要がある。
エンジンは停止時にクランク軸のカウンターウエイトの重みでわずかに逆転する場合があるので、逆転も検出できるボッシュ製の新センサを採用した。これによって従来より正確にピストンの位置を把握し、素早い再始動を可能にしている。
(注:逆回転の検知の必要性として考えられることは、逆回転によってピストンの位置が微妙にずれる、最適範囲にあるピストンを選んで燃料噴射を行うということか?。まさかクランク軸を強制的には回さないだろう(素人の私見))
夏場では、エンジン停止中に室温が上昇するため、早めに再始動してエアコンを作動させる。このため、夏場の燃費改善は厳しいが、それ以外の季節では、ドライビングにもよるものの5、6%程度の燃費改善を見込んでいる。
また、同システムを実現するために再始動用サブバッテリ等が必要となっている。このシステム単体では数万円の価格上昇になる。サブバッテリーは結構大きく、システム維持にも費用が掛かりそう。
様々な理由があるにせよ、発表から実用までに4年近く掛かった。クランクを始めとするシステムの精密なコントロール、また、ベースとして高度な直噴エンジンの技術は不可欠。全ての新技術に共通することだが、技術の積み上げから検証を経ての商品化には頭が下がる。
新しいものを生み出していくことは大変である。しかし、そこには技術者としての誇り、顕然としたロマン、そしてカスタマーの満足への喜びがある。皆、努力をしていると、思う。
水平対向エンジンやⅤ型エンジンは、左右のシリンダーブロックがコンロッド分だけずれている。所が、オートバイのハーレーダビッドソンのⅤ型エンジンのシリンダーは同一線状に配置され、ずれてはいない。随分前からの疑問だった。
ハーレーのエンジンに疑問を抱くなら、ゼロ戦などの星型エンジンはシリンダーが中心軸に向かってラジアル状に配置されている。このエンジンのシリンダーもハーレーと同様、同一平面上に配置され、ずれがないではないか!?。
クランクシャフトとコンロッドの関係はどうなっているのだという、ハーレーの場合よりも激しい疑問が涌いてきた。しかも、今まで、このエンジンに関してまったく疑問を持つことなくそれを眺めてきた自分に大層驚いたのである。
これを知らなくても日常生活に何ら不都合がある訳ではないので、激しい疑問ではあったが、長い間そのままにしていたし、むしろ、調べると無駄(?)な時間を費やす可能性が高い。いや、決定的にそうなのだ。
(余計な前置きはいい)
星型エンジンでは、主コンロッドと呼ばれる大きなコンロッドがピストンとクランクシャフトを繋ぎ、残りの副コンロッドと呼ばれるものが、主コンロッドのビッグエンド側に取り付けられている。
これで、クランクシャフトを回している(若干、ロータリーエンジンに似ている(?))。

動画だと星型エンジンの動きが分かりやすい(下記サイト)。
「ワーバード」から「星型エンジンの構造」:星型エンジンについての詳しい説明がある。
「how stuff works」から「How Radial Engines Work」:非常に綺麗なアニメーション。
主コンロッドを見て新たな疑問が生じた。
主コンロッドのビッグエンドが分割式ではない。分割式でなければ、クランクシャフトにコンロッドを組み込めない。そうすると、クランクシャフトが分割式になっているとしか考えられない。
(自動車と同じようなスプリットタイプもあるがポピュラーではないようだ)
「Aircraft Engine Historical society」という古い航空機エンジンを広く紹介、解説しているサイトに詳しい説明があった(上の2つのイラストもこのサイトからの引用)。
やはり、スプラインによる結合(分割)式クランクである。この方式は第二次大戦中の航空機に非常に多く採用されていた。しかし、この方式では加工誤差や、公差のために若干のガタがあるし、ガタがなくては組み立てられない。また、軍用機では星型ユニットが2段、3段と重ねられてパワーを得ていたため(ゼロ戦は2段重ね(復列))、接合部の数も増えてくる。それが強度に影響しないのであろうかという疑問が浮かぶ。

技術の進歩というものは素晴らしい。
軸方向の接合ではなく、フェイススプライン(Face-splined Crankshaft)という、ボルトとの併用による新たなクランクシャフトの接合方式が、Gleason Works of Rochester, N.Y.によって考案された。しかもギザギザのギア様ではなく、インボリュート曲線によるスプライン接合というもので、これによって強度は飛躍的に向上した。
今日では、一般にこの方法が用いられているという。
所で、私の最初の疑問であるハーレーのエンジンだが・・。
前述の「how stuff works」の「How Radial Engines Work」のアプリケーション事例として・・
「ラジアルエンジン コンセプトの影響による、Harley Davidson motorcycleの2気筒エンジンを未だ見ることができる」と、記述されている。
ハーレーのエンジンデザインが星型エンジンから来ているとは驚いた。ただし、ハーレーのコンロッドは、クランクの一点を2つのピストンが共有しているが、星型エンジンとは違って主と副コンロッドは無い。片方のコンロッドがフォークのように二股状になっている。
参考画像は、アメリカのオークションサイトに出品してあったスペシャルコネクティングロッドアッシー。星型エンジンのコンロッドによく似ている(イラスト:一番上)。
ハーレーの場合、コンロッドの質量が違うが、このバランスはどこで取っているのか?
(新たな疑問が出てくるが、取りあえずここまで・・)
付録:現在でも販売されているエアプレーン用ラジアルエンジンを使用して製作されたモーターサイクル。好奇心を具現化できるアメリカの事例(圧倒的、解釈不用)。

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